研究ノート

〜「情報観光論」序説〜 情報化時代（IT革命）がツーリズムに与える影響についての研究会の提唱と 情報化時代における観光産業のあり方についての提言

JTB海外旅行虎ノ門第１支店 小林裕和

○情報と観光論

現代は「情報」がさまざまなレベルにおいて経済・社会にインパクトを与えている。そのコンテクストの中では「観光」という現象に対しても「情報」がいろいろな場面で関わっている。その関わり方を体系的にとらえることにより、観光現象を解明・理解する研究として「情報観光論」を提唱したい。 「観光論」が「観光現象をいっそう健全に発達させる諸方策を探るための基礎としての基本的理解を得るための研究」（「現代観光論」鈴木忠義編）であり「実証を通じて科学的・客観的でなくてはならない」（同）とすれば、「情報」がさまざまな形で現代社会に影響を与えている以上、「観光」を論じる際にもその影響を無視できるものではなく、その影響を分析することは、情報化時代における観光現象を「科学的・客観的」に分析する手法となりうると考えられる。

○「工業の時代」〜マスツーリズムによる旅行業の発生

産業革命以降、つまり「工業の時代」あるいはトフラーのいう「第二の波」の時代に産業として発生した旅行業は、旅行者の形態としてはマスツーリズムからはじまった。トマスクックがラフバラという町で行われる禁酒運動の大会参加者をあらかじめ把握しておき、鉄道会社と交渉して割引運賃での列車を確保し団体旅行を組織したのが1841年である。その後、1851年第1回万国博覧会ロンドンなどを経て産業としての旅行業が発達していった。

○「情報化時代」の観光産業の課題

情報化時代の到来と機を平行して、旅行形態として個人旅行あるいは思想的背景をとりこんだ「サステナブルツーリズム」が台頭してきた。これらの出現の理由は従来のマスツーリズムの観光論の論理では十分に説明できない。 　さらに情報が観光行動に及ぼす影響や、多くのメディアや地方自治体による観光地の情報提供、それによって生じる消費者の観光地選択手法の変化、観光地の評価など、さまざまな現象が生じている。一方で観光産業が消費者に提供するもの（旅行商品、情報など）も自ずと変化してきた。 つまり、観光産業自体が情報と切り離して論じることのできない産業となってきている。 たとえば梅棹忠夫はすでに1962年に「情報産業論」という論文において観光産業が情報産業であることを指摘している。 　梅棹によれば観光産業は「体験情報」を提供することによってなりたっており、その意味で観光産業は情報産業であるという。また交通機関についても、人という物体を運ぶのではなく、情報を運んでいるという意味で、情報産業といえる。

主な研究テーマ

観光と情報の関わり方はいろいろなレベルが考えられる。以下例を挙げるが今後の議論により整理する必要がある。 インターネットによる情報提供 地域情報化による影響 旅行会社、宿泊機関、交通機関の役割の再構築 マスツーリズムからＦＩＴの時代へ 観光地における情報整備 　　事前にガイドブックなどなくても行けば掲示板や案内を見て楽しみ方がわかるようになっていると便利。現地の掲示板はどこに何があるという情報だけでなく、楽しみ方も提供できるような表示であればいい。 　→外国の例、スキー場の案内などが参考になる

研究会の提唱

以　上 （1997年11月14日）